安楽死については、大きく分けて2つの考え方があります。
消極的安楽死と積極的安楽死の2つです。
以下で2つの安楽死についての考え方を見ていきます。
安楽死は「積極的安楽死」と同義とされることが多く、当ホームページでは積極的安楽死の合法化を求めています。
- 消極的安楽死
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定義
治療の継続や延命措置をあえて行わないことで、自然な死を迎えさせる選択を指します。患者が自らの死期を受け入れる形で、医療行為を最小限に留めることです
具体的な方法
• 人工呼吸器の取り外し:呼吸機能が完全に停止している患者の人工呼吸器を外す。
• 経管栄養の中止:胃ろうや点滴による栄養補給を停止する。
• 心肺蘇生の拒否:心停止が起きても蘇生を試みない(DNR指示: Do Not Resuscitate)。
• 延命治療の中止:抗がん剤などの治療をやめる。
特徴
• 患者が自然に死を迎える過程を促進する形となる。
• 本人の意思が明確である場合や、家族の同意が必要。
• 緩和ケア(苦痛を和らげる治療)は継続されることが一般的。
• 尊厳死に非常に近い概念とされ、倫理的な議論は少なめ。
法的状況
多くの国で事実上認められており、倫理的な問題が比較的少ない。ただし、手続きに厳密な基準が求められる。
- 積極的安楽死
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定義
医師が患者の苦痛を和らげるために、致死薬や薬物を用いて意図的に死をもたらす行為を指します。
具体的な方法
• 致死薬の注射:医師が直接薬物を注射して患者を死に至らせる。
• 致死薬の処方:患者が自分で薬物を服用し死に至る(自殺幇助に近い形)。
• 麻酔の過剰投与:鎮痛を目的とした薬剤を意図的に過剰投与し、死に至らせる。
特徴
• 医師が積極的に死をもたらす行為を行うため、倫理的な議論が多い。
• 患者本人が耐え難い苦痛を抱えている場合、本人の意思が強く求められる。
• 本人の意思確認や法的手続きが非常に厳格に求められる。
法的状況
• 合法な国・地域:オランダ、ベルギー、スイス、カナダなどで合法。ただし、厳しい条件が設けられている。
• 違法な国・地域:日本を含む多くの国では違法。ただし、法的に曖昧な状況で議論が行われる場合もある。
安楽死と尊厳死の違い
安楽死と尊厳死は、いずれも不治かつ末期の患者が自身の意思で死を迎える点で共通している。しかし、死期を早める方法に違いがある。
尊厳死とは、治癒が難しい患者が自身の意思で延命治療を拒否し、自然に死を迎えることである。延命措置を中止することで死期を迎える「消極的安楽死」とも重なる。患者の尊厳を守り、苦痛を和らげるケアに切り替えるために実施される。
安楽死は「積極的安楽死」と同義とされることが多い。医師など第三者が薬物を投与するなどして、患者の死期を積極的に早めることだ。世界的には、尊厳死も安楽死の一形態と見なされることが多い。しかし、日本では明確に区別されている。



日本における安楽死の課題は、法整備の欠如、倫理的・社会的な反対意見、医療体制の不備などが絡み合い、簡単に解決できるものではありません。安楽死を議論する際には、患者本人の尊厳を守るだけでなく、社会全体での理解と合意、医療・福祉体制の充実が必要です。現在では6つの課題があると考えています
1. 法的な課題
• 安楽死に関する法律の欠如
日本では、安楽死を明確に認める法律が存在しません。そのため、安楽死を行った場合、殺人罪や自殺幇助罪に問われる可能性があります。
• 曖昧な判例の存在
過去の裁判では、安楽死に関する判例(横浜地裁判決、1995年)が存在しますが、これに基づく明確な法整備がされておらず、安楽死が行われた場合の判断基準が不明確です。
• 延命治療との線引きの難しさ
延命治療を中止する「尊厳死」と積極的に死をもたらす「安楽死」の境界が曖昧であり、医療現場での混乱を招く可能性があります。
2. 倫理的な課題
• 医師の役割と倫理観
医師は患者を救うことを使命とするため、安楽死を行うことが医療倫理に反すると考える意見が根強くあります。これにより、医師の心理的負担や職業的ジレンマが発生します。
• 患者の意思確認の難しさ
安楽死を希望する患者が、自発的かつ十分に熟慮した意思を持っているかどうかを判断するのは困難です。特に精神疾患や認知症患者の場合、意思の正確性に疑念が生じます。
• 家族や周囲への影響
患者本人が安楽死を希望していても、家族の感情的な負担や倫理観が反対に働く場合があり、これが実施の障壁となることがあります。
3. 社会的な課題
• 死生観の違い
日本社会では伝統的に「死」をタブー視する傾向があり、安楽死を議論すること自体に抵抗感を持つ人が多いです。また、「家族と共に生きる」という価値観が強く、家族の同意が得られないケースが懸念されます。
• 誤用や乱用のリスク
安楽死が法制化された場合、社会的弱者(高齢者、障がい者、経済的に困窮している人など)が、本人の真の意思に反して安楽死を選択させられる可能性があります。このようなリスクを防ぐ仕組みが求められます。
• 医療費削減との関連性
一部では、医療費削減の手段として安楽死が利用されるのではないかという懸念もあります。これにより、安楽死が本人の意思ではなく、経済的理由で選択される可能性が問題視されています。
4. 医療・福祉体制の課題
• 緩和ケアの不足
日本では緩和ケア(ホスピスケア)の普及が不十分であり、安楽死を希望する患者が緩和ケアを十分に受けられない場合があります。本来、安楽死の前に苦痛を軽減する医療が提供されるべきです。
• 医療従事者への支援体制の欠如
安楽死の法制化に伴い、医療従事者への倫理教育や心理的ケアが必要ですが、現状ではその体制が整っていません。
5. 実務的な課題
• 適用基準の設定
どのような患者が安楽死の対象となるのかを定める基準が必要です。たとえば、以下の点が議論されています。
• 難病や末期症状で回復の見込みがない場合に限定するか。
• 精神疾患を含むかどうか。
• 患者の苦痛の程度をどう評価するか。
• 意思表示の確実性
安楽死を希望する患者が意思を明確に伝えるための仕組み(リビングウィルや意思表明書)が整備されていません。長期的な意思確認プロセスが必要です。
6. 国際的な影響
• 他国の動向との比較
オランダ、スイス、カナダなどでは安楽死が合法化されていますが、それぞれの国で運用基準が異なります。日本でも、他国の事例を踏まえた独自のルールを構築する必要があります。
- 安楽死を法整備するためには、国民的議論の促進、適用条件の厳格化、法的枠組みの整備、医療体制の充実、誤用防止策の導入が不可欠です。また、他国の事例を参考にしつつ、日本の文化や価値観に合った独自の制度を設計する必要があります。時間をかけて慎重に議論し、合意形成を目指すことが重要です。
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